口腔外科について
口腔外科は、口の中や顎、顔の周辺に発生するさまざまな病気やケガを扱う診療科です。歯科口腔外科とも呼ばれ、歯だけでなく、口の中全体や顎、顔の周囲の組織も対象となります。主に外科的な処置を行う分野で、親知らずの抜歯や嚢胞(膿の袋)の除去など、歯に関係する病変の治療を行います。
通常の歯科診療と異なり、口腔外科では歯以外にも、唇や歯茎、口内の粘膜に関わる病変や、口腔乾燥症、神経に関する疾患なども診療範囲に含まれます。さらに、交通事故やスポーツによる外傷の処置も行います。
親知らずの抜歯
親知らずは、上下左右の奥に生える最後の永久歯で、15歳ごろに生え揃う他の歯と異なり、20歳前後に生え始めるため、親に知られずに生えてくることが名前の由来です。親知らずは必ず抜歯が必要なわけではありませんが、斜めや水平に生えてくる場合、歯並びや他の歯に悪影響を及ぼす可能性があります。
当院では、親知らずの状態を詳細に診断し、抜歯の必要性やリスクについて丁寧に説明いたします。不明点や不安があれば、いつでもご相談ください。
CTによる正確な診断に基づく安全な抜歯
親知らずの位置や生え方によって、抜歯の難易度は大きく異なります。特に、親知らずが横向きや斜めに生えていたり、深い場所で神経に近接している場合、通常の歯科医院での抜歯が難しくなることがあります。
当院では、CTスキャンを使用して親知らずの正確な位置や根の形、周囲の神経や血管との関係を詳細に把握します。これにより、他院で抜歯が難しいとされた場合も当院では抜歯が可能です。
親知らずを抜いたほうがいい場合
炎症がある場合
親知らずの周囲に痛みや腫れ、膿が出るなどの炎症がある場合は、抜歯が適切です。これらの症状は、親知らず周辺に汚れがたまり、炎症が発生しているサインです。放置すると口臭の原因にもなります。
手前の歯がむし歯になっている場合
親知らずとその隣の歯の間に汚れが溜まり、手前の歯がむし歯になってしまうことがあります。この場合、親知らずを抜歯し、むし歯になった歯の治療を行う必要があります。
将来的な悪化の可能性がある場合
現在は症状がなくても、将来的にむし歯や炎症が起こりやすいとレントゲンで確認できる場合、予防的に抜歯をすることがすすめられます。
矯正治療を行う場合
矯正治療の計画において、親知らずが噛み合わせや歯並びに影響を及ぼすと予想される場合も、抜歯が推奨されることがあります。ただし、矯正治療のサポートとなる場合もあるため、抜歯の判断は担当医と相談しながら進めます。
抜歯後の痛みと腫れ
抜歯後、麻酔が切れるとともに痛みが現れ、徐々に腫れが生じることがあります。特に、抜歯にかかる時間が長いほど痛みが強くなる傾向があります。抜歯後の傷は、抜歯窩(歯を抜いたあとの空間)に血が溜まることで自然に治癒が進むため、過度にうがいをしたり傷口に触れるのは避けましょう。傷口を守ることで、治癒がスムーズに進みます。
顎関節症
顎関節症は、顎の関節やその周辺の筋肉、靭帯、軟骨などに痛みや動作障害が生じる疾患です。女性に多く、特に20代での発症が多いとされています。場合によっては自然に治癒しますが、痛みが長引く場合や早期に改善したい場合は歯科医院に相談することをおすすめします。
顎関節症の症状
口を動かすときの痛み
耳の前にある顎関節部分や顔の片側から頭にかけて痛むことがあります。
顎を動かすときに音がする
顎を動かすと「カクカク」や「ギシギシ」といった音がする場合があり、これも顎関節症の典型的な症状です。
口が大きく開けられない
顎関節内の組織に問題が生じ、あごの動きが制限されることがあります。このため、顎関節症が引き起こされている可能性があります。
噛み合わせの急な変化
関節や筋肉に問題が生じると、顎の動きが変わり、結果として噛み合わせが突然変わることもあります。
これらの症状が続く場合は、早めに歯科医院での診断と適切な治療を受けることが、改善への近道です。
顎関節症の原因
顎関節症は単一の原因で発症するわけではなく、複数の要因が重なり、その人の耐久限界を超えたときに生じるとされています。これにより、なりやすい人となりにくい人がいるのも特徴です。ここでは、顎関節症の原因となり得る主な要因について説明します。
ブラキシズム
ブラキシズムとは、歯を強く噛みしめる「くいしばり」、歯を擦り合わせる「歯ぎしり」、歯をカチカチ鳴らす「タッピング」などの無意識の行動を指します。特に、音がしない歯ぎしりが全体の8割を占め、本人が自覚していない場合が多いです。これらの習慣は、咀嚼筋や関節に過剰な負担をかけ、顎関節症の原因となります。
TCH(Tooth Contacting Habit)
TCHとは、日常的に上下の歯を軽く接触させている状態のことです。通常、歯は食事や会話中のみ接触し、その時間は1日で20分程度が理想とされています。しかし、TCHの習慣があると接触時間が増え、顔の筋肉や顎関節に慢性的な負担を与えることになり、顎関節症のリスクを高めます。
悪習癖
普段の何気ない行動も、繰り返されることで顎関節に負担をかける原因となり得ます。片側の歯でのみ噛む「偏咀嚼」、うつ伏せで寝る習慣、頬杖をつく癖、猫背の姿勢など、日常の癖が筋肉や関節に影響を及ぼし、負担を蓄積させます。
ストレス
日常生活でのストレスも顎関節症の要因と考えられています。家庭や仕事の問題、人間関係の悩みなどが精神的緊張を引き起こし、無意識にくいしばりや肩・首の筋肉の緊張を引き起こします。ストレスが睡眠障害や夜間のブラキシズムを悪化させることも顎関節症のリスク要因となります。
治療方法
スプリント治療
スプリント治療は、顎関節への負担を軽減するために専用のマウスピースを装着する方法です。特に、歯ぎしりや食いしばりが原因で顎関節に過剰な負担がかかる場合に効果的です。これらの癖は無意識のうちに行われることが多く、特に就寝中には自分で制御することが難しいため、マウスピースが必要です。
スプリントは上下どちらかの歯列をすべて覆う形状で作られ、装着することで顎関節がリラックスした状態になり、咀嚼筋の緊張を緩和することができます。
顎変形症
顎変形症は、上あごや下あごの骨の大きさや位置の異常により噛み合わせや顔のバランスに異常が生じる症状です。遺伝が要因となることもありますが、明確な原因が分からないケースがほとんどです。例えば、指しゃぶりや舌を出す癖なども影響する可能性がありますが、一般的には成長のアンバランスが原因とされています。成長期に顎の不均衡が目立つことが多く、代表的な症状には下顎前突症(下顎が突き出る)、小下顎症(下顎が小さい)、上顎前突症(上顎が突き出る)などがあり、それぞれに咬合不正や顔の非対称が見られます。
顎変形症の症状
顎変形症では、顎の大きさや位置の異常によって噛み合わせが不安定になり、顔の見た目にも歪みが生じることがあります。具体的には、下顎前突のような見た目の変形や顔面の非対称などが挙げられます。これにより、噛み合わせだけでなく、顔全体のバランスに影響を及ぼすことがあります。
顎変形症の治療法
顎手術
重度の顎変形症の場合、外科手術で顎の骨を切除・移動する処置が行われることがあります。しかし、手術にはリスクが伴い、まれに麻痺などの後遺症が残ることもあります。そのため、手術は慎重に検討する必要があります。実際には、手術を避ける方法で対応できるケースも多く、顎関節症と矯正治療の両面からの診断を行う当院では、より安全で効果的な治療方法をご提案できますので、まずはご相談ください。