- 歯を残すための精密根管治療
- 自費と保険の根管治療の違い
- 根管治療の成功率上げるための設備
- 根管治療が必要になるケース
- 根管治療の種類
- 根管治療の流れ
- 歯の神経と血管を残す「歯髄温存療法」
- 根管治療は最後までしっかり治療を行いましょう
歯を残すための精密根管治療
根管治療は、神経を除去する「根の治療」として一般的に行われる保険診療の一環ですが、実際にはこの治療に対する保険診療報酬が極めて低いため、十分な時間、設備、材料が確保できないのが現状です。
そのため、患者さんにとっては治療費が安価に感じられるものの、治療回数が多く必要になったり、成功率が低下したりするリスクが伴います。実際、保険適用の根管治療の再発率は約50%とされ、これは保険治療が不十分な条件で行われることが要因です。このため、将来的な抜歯リスクも高まります。
福岡市東区の歯医者 スマイルライン歯科・矯正歯科アイランドシティでは、マイクロスコープを用いた精密根管治療を行っております。他院で抜歯と言われた方は一度ご相談ください。
自費と保険の根管治療の違い
保険診療では、治療にかけられる時間や使用できる器具や材料に制限があるため、精度が求められる処置では対応が難しい場合もあります。一方、自費診療の精密根管治療では、ラバーダムや、柔軟で精密な動きが可能なニッケルチタン製器具を使用し、患部への細菌感染を防ぎつつ丁寧に処置を行います。また、歯科医師が十分な時間をかけ、専用薬剤や高精度機器を用いることで、より高い成功率と長期的な安定が期待できます。
一度治療を行った歯は再治療が難しいため、初回での成功が重要です。
根管治療の成功率上げるための設備
『マイクロスコープ』を使用した精密根管治療
根管治療は、歯の内部にある細い管から感染物質を取り除く非常に繊細な治療です。従来の治療では、肉眼での確認に頼ることが一般的でしたが、マイクロスコープの導入により歯の内部を大きく拡大して観察できるようになり、これまで発見が難しかった細かな管や隠れた感染部位をしっかりと確認しながら治療を進めることが可能です。
マイクロスコープを用いることで、感染物質の取り残しを防ぎ、歯の保存率を向上させることが期待できます。
『歯科用CT』による精密な検査と正確な診断
歯科用CTを活用することで、顎の骨の状態や歯と神経の位置関係を把握することが可能です。神経や血管の位置、歯の根の病変の有無も把握できるため、治療の精度が向上し、治療時間も短縮できます。また、患者さんに画像を見せることで、治療の必要性を理解しやすくなる点も利点です。
『ニッケルチタンファイル』で汚染された組織を除去
根管内の汚染された組織は、ファイルという器具を使用して取り除きますが、従来のファイルは硬く柔軟性に欠けるため、複雑な根管内を完全に清掃するのが難しいのが課題でした。
当院では、柔軟性のあるニッケルチタンファイルを用いることで、より効率的に根管内の清掃を行い、従来の治療回数が5~6回必要だったものを1回で行えるようになりました。
『ラバーダム防湿』で細菌の感染を防ぐ
ラバーダム防湿は、専用のゴムマスクを使用して治療箇所を口内から隔離し、唾液や細菌が治療部位に侵入するのを防ぎます。根管内に細菌が入ると、再び炎症が起き、再治療が必要になるリスクが高まるため、当院ではこの防湿処置を徹底しています。
根管治療が必要になるケース
むし歯による歯髄の炎症
むし歯が進行し、歯髄に細菌感染を引き起こすと強い痛みを伴い、通常のむし歯治療では対処できない場合に根管治療が必要です。
歯髄壊死・歯髄壊疽
外傷や矯正治療により歯髄が壊死したり、感染を起こして壊疽が生じた場合に根管治療が必要となります。
物理的刺激による歯髄の損傷
外的要因や熱刺激により歯髄が損傷を受けた場合、炎症が生じたり壊死することがあります。この場合も根管治療が求められます。
根尖性病変
根管への細菌感染により、歯根周辺に膿がたまり、炎症が起こることがあります。この場合、根管治療が必要です。
根管治療の種類
抜髄
むし歯が進行し、強い痛みが生じた際に行われる「抜髄」は、歯の内部にある神経を取り除くことで痛みを和らげる治療法です。この治療は、進行したむし歯に対して効果的です。抜随後は歯の内部を洗浄し、細菌の再侵入を防止するために薬を詰めてフタをします。
抜髄治療は、むし歯の痛みを解消するとともに歯を残すための最後の手段とも言える重要な治療法であり、適切に行われることでむし歯の再発を防ぎ、歯の寿命を延ばすことが期待できます。
感染根管治療
感染根管治療は、神経の除去後やむし歯を放置したことによって根管内に感染が生じた場合に行われる治療法です。根管内の細菌を除去し、再感染防止のために細心の注意を払って作業を進めます。感染根管治療は、再び根管治療が必要になった場合や感染部位が残った場合に行います。
治療が成功すれば、患者さんの痛みを和らげ、抜歯を避けることで歯を保存することができます。
再根管治療
根管治療を受けても、二度と再発しないとは限りません。再根管治療は下記のような事態が起きた際に行う治療法です。
- 初回治療で感染を完全に除去できなかった
- 治療後に新たな感染が発生した
再根管治療によって細菌の減少が期待できるものの、初回治療と比べて歯に大きなダメージを受ける可能性があるため、慎重に判断しなければなりません。
外科的歯内療法
外科的歯内療法は、根管治療では改善が期待できない特殊な症例に対して行う治療法です。歯の根の先端を処理する歯根端切除術、一度歯を抜いてから再植する意図的再植術があります。下記のケースに選択されます。
- 根管内が複雑で従来の治療では対処が難しい
- 根管治療後に感染が再発した
外科的歯内療法によって、歯を抜くことなく保存することが可能となり、患者さんの自然な咬合を維持し、より良好な口腔環境を保つことができます。
根管治療の流れ
STEP1根の中を清潔に保つ
根管の中が唾液や歯垢による細菌感染を起こさないように、ラバーダムを使用して、唾液が根管内に入らないようにし、細菌の侵入を防ぎます。
STEP2神経を残さずに除去する
歯の神経は個人差があり、根管の本数も同じではありません。根管内に死んだ神経を残してしまうと、痛みや炎症が再発する可能性があります。そのため、できる限り細菌を残さないように、しっかりと消毒することが重要です。
STEP3根管の形を整える
神経の管はさまざまな形状をしており、その中にゴム状の薬剤を充填していくため、薬剤が入りやすくなるよう消毒しながら根管の形を整え、丁寧に清掃していきます。
STEP4神経管に詰め物や被せ物をする
神経管を清潔に保ち、根管内の形を整えた後、ガッタパーチャというゴム状の薬を詰めていきます。神経を失った歯は空洞にしておくとむし歯になりやすいため、神経のあった部分に空気が入らないようにしっかりと詰め物や被せ物を行います。
歯の神経と血管を残す「歯髄温存療法」
歯髄温存療法とは、歯の神経や血管を含む「歯髄」を抜かずに残す治療法です。通常の根管治療では、歯髄を取り除いて根の中を無菌にしますが、この治療法ではあえて時間をかけて歯髄を保存します。これは、歯髄が歯の健康にとって大切な役割を持っているためです。
歯髄は、歯の内側に酸素や栄養を運び、免疫細胞を送り込むことで歯を健康に保ちます。また、歯に外から刺激が加わると、歯を修復したり、痛みを通じて警告を出す働きも期待できます。神経を失った歯はもろくなりやすく、歯根が折れるリスクも高くなるため、寿命が短くなる傾向にあります。さらに、根管治療を受けた歯は、根の先で炎症や病気を起こしやすくなることもあります。
歯髄温存療法によって歯髄を残すことで、こうしたリスクをできるだけ減らし、歯を長持ちさせることが可能です。
神経(歯髄)を残すMTA覆髄治療
MTAとは
MTA覆髄治療(歯髄保存治療)は、ケイ酸カルシウムが主成分のMTAを使用した覆髄治療です。従来の水酸化カルシウムセメントと比較して、再生される象牙質が緻密で感染しにくいという特性があります。MTA覆髄治療のポイントは、優れた覆髄材を使用することだけでなく、むし歯を取り除く際の治療過程にあります。歯髄に近い場所のむし歯を除去するため、神経にダメージを与えないように行うことが重要です。
MTAを用いた断髄法
従来、歯髄に達したむし歯を改善する方法として根管治療を行うことが一般的でしたが、感染している部分の神経のみを取り、根の神経を残すこともできます。その治療法が断髄で、下記2つに分類されます。
部分断髄
神経の一部分がむし歯によりダメージを受けた場合でも、近年の研究で歯髄全体が感染していないことが判明しました。そのため、感染した組織を除去し、健康な神経を残すことができます。これが「部分断髄」です。以前は子どもの歯のみが適用されていましたが、MTAセメントの登場により成人にも適応できるようになってきました。
歯頚部断髄
抜髄は感染があれば神経をすべて除去しますが、歯頚部断髄では感染している歯冠部の歯髄のみを取り除きます。根尖部に感染がない場合は、治癒の可能性が高いためです。部分的にでも神経を残すことは、抜歯のリスクを低減させ、入れ歯などの人工歯に頼る必要性を減らします。
MTAのメリット・デメリット
メリット
- 通常であれば神経の除去が必要なケースでも神経を残せる可能性がある
- 全ての歯髄を取り除かないことで、歯を削る量を最小限に抑えることができる
- 歯髄を一部残すことで、栄養が供給され、脆くなるリスクを軽減できる
- 歯の破折や根の病気の発生リスクが低くなり、歯の寿命が延びる
デメリット
- 歯髄保存療法が適用できない症例も存在する
- 適用できない場合は抜髄を行い根管治療が必要となる
- 治療後しばらくはしみることがある
根管治療は最後までしっかり治療を行いましょう
根管治療は、感染した神経や血管を取り除き、再感染を防ぐためにとても重要な治療です。細く複雑な根管内の処置には高度な技術が必要で、また十分な時間をかけることが成功の鍵となります。痛みが和らいだ時点で治療を終えたくなることもありますが、治療を最後まで続けることが、再発や腫れ、あごの骨や全身への感染リスクを防ぐために不可欠です。
当院では、患者さんの歯の健康を守るために、最初から最後まで丁寧に根管治療を行い、安心して治療を受けていただけるようサポートいたします。歯の健康を長く保つためにも、最後までしっかりと根管治療を行いましょう。